自分の整体の技術は被災地で通用するか?

OBOGインタビュー 覚正伴徳(かくしょう とものり)さん

東日本大震災 ボランティアOBOGインタビュー 覚正伴徳さん

いただいた名刺を見て、まずはお名前にビックリ。お寺の住職か、はたまた芸名なのか。これまで幾度も聞かれたであろうこんなベタな疑問に「珍しいでしょ? NTTで調べると全国に23件しかないらしいですよ」と優しく答えてくれた。
持っている技術を生かし、主に整体ボランティアとしてこれまで活動を続けてきたという。覚正さんは淡々と語る静かな口調とは裏腹に、被災者に向けた熱い思いと寄り添いの心が感じられる人だ。6月から定期的に活動している彼に、どんな気持ちで現地に赴いているのかを聞いた。

 

夜の12時まで施術して、太陽が黄色く見えた

◆プロフィール

井本整体という学校で学んでいて、ふだんは整体指導者として、整体施術や体作りの指導をしています。この業界に入ってかれこれ12年。3、4年ほど前から、住まいのある神奈川と東京を中心に、患者さんのお宅へ訪問施術しています。
整体とは、何も特別なことではなく、生まれながらにして備わっている本人の力を発揮させることを目的とします。食生活や生活環境の変化で、今と昔ではそもそも体の作りが違うし、例えば「猛暑による疲れ」といっても、体に出る影響はその人によって皆違います。その時ごとに体の変化を読んでいき、その人に合った施術が必要です。
また、施術するにあたっては自分自身の体も作りこまねばならないので、日々勉強の積み重ね。生涯学び続けていく世界ですね。

◆ボランティアに参加したきっかけ

「居ても立ってもいられなかった」とかそんなカッコいいものじゃないですけど、被災地で整体の技術を役立てたいと思い、ボランティアに参加しました。
これまで得た技術がいくら優れていたとしても、実際に役に立つものでなければ意味がない。慣れない避難生活で心身ともに疲れている方々に対して、自分の持っている技術ははたしてどこまで通用するのか? 現場に身を置き、被災された方の反応を実際に確かめたいと思いました。
最初は別のボランティア団体に参加登録をしていたんですが、なかなかお呼びがかからなくて。ネットで調べていくうち、RQでも整体施術ボランティアの実績があるとわかったので、こちらに参加することにしました。これまでに計6回現地入りし、毎回1週間程度活動しています。

 

そもそも整体は人の体に触れるというデリケートなものですし、避難所の皆さん全員に声掛けしたうえで行わないと不公平感が出たりもします。
場所によっては需要のないケースも。なので、ある程度条件が揃っていないと施術が難しい面があります。行く前からその辺りは予想していたので、整体以外の作業にも参加する心づもりで現地入りしています。これまで登米をメインに唐桑・歌津で活動し、整体以外にも物資の仕分けや拠点の環境整備、その他諸々何でも参加しました。

 

最初に現地入りしたのは6月で、小泉地区のひまわりに入りました。
午前中はお茶っこしつつ、空いたスペースで少しずつ様子を見ながら始めました。最初は体調を崩しているボランティアメンバーへの施術が中心でした。当時はペースが全く読めなくて、1日20人くらいを夜の12時近くまでぶっ通しで施術していました。
そんな生活を丸3日続けていたら、4日目には太陽が黄色く見えるようになってきて(笑)、ついには体調を崩してしまいました。ボランティア・ハイっていうんでしょうか、その時はもうとにかくガムシャラで。自分のことそっちのけでしたね。7月8月と繰り返し参加するうち、少しずつペースが掴めてきました。

 

限られた時間の中で、来てくださった方全員を診るわけですから、おひとりにかけられる時間は大体5分から10分程度。重要な個所をピンポイントで押さえ、簡単な体操や注意点などを個別にアドバイスしていきます。
1時間半で20人診たこともありました。短時間でこれだけたくさんの方を診る機会はなかなかありませんから、とても貴重な体験でした。また、これまで知識として知っていた症例を実際に拝見したり、現場では多くのことを学ばせていただきました。
東北の方々はふだんから仕事で体を使い込んでいますから、体がちゃんと生きていて瑞々しい。来てくださる方は当然体調が悪い人たちなんですけれど、元がちゃんとしてますからどこを取ってもしっかりとした手応えを感じました。

 

東日本大震災 ボランティアOBOGインタビュー 覚正伴徳さん

 

体験することの大切さを改めて知る

◆自分の中で変わったこと

自分の中で変わったことというか、自分の目で見ること、体験することの大切さを改めて実感しました。
今はインターネット全盛の時代ですからパソコンでちょっと調べれば、あたかもその地に行ったような気持ちにもなるし知識も増えますよね。でも頭でっかちになっていくことにずっと違和感を感じていて。
その場所に身を置き、現地の人と話し、触れ合い、作業しながら、直接自分の五感で感じることが大事だと思いました。こうして現地に赴くことを自分の誇りに思っていますし、これからも現場に身を置いていきたいです。

 

トランペットにボランティアが奮い立つ

あと活動していて感じたのは、音楽の力ってすごいなということ。これまでピアノやヴァイオリンや三線など、現地で何度か聞く機会がありました。RQには芸達者な人が本当に多いですよね。
「天空の城ラピュタ」の冒頭で、主人公パズーが吹いていた「ハトと少年」っていう曲、わかりますか? 唐桑にトランペットを持ってきている人がいて、ある朝、クルマで唐桑の拠点を出発した時、その彼が意気揚々と「ハトと少年」を吹いて僕らを送り出してくれたんですよ。車内はそれはもう盛り上がりました!(笑) メンバーの気持ちがグッと奮い立ちましたね。気持ちを込めて伝えようとしている音楽って、やっぱり人に届くんだなと改めて実感した出来事でした。

 

◆RQについて

参加ボランティア数延べ約3万人という数字は、RQの柔軟な活動が多くの人に支持されたという、ひとつの結果だと思います。多くの意見を受け入れ、そして柔軟に対応できることがRQの強み。これまで同様「被災地のため」という視点を外さずに、懐の深い存在であり続けてほしいです。

 

◆これからの活動

希望としては、今後も被災された方々に対して整体を続けていきたいです。東北はその土地柄か、ご自分の痛みや辛さをあまり表に出さず、押し黙っている方の割合が多いように感じました。
体が本当に辛くても家でじっとしている人が、まだまだいらっしゃるのではないかと気がかりです。体の痛みを和らげることで、少なからず気持ちも上向いていくと思います。できることなら自ら手を挙げられない方の元にこそ、出向いていきたいですね。

 

取材・文:東京本部 Natalie Cook

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