被災した子どもたちをカメラマンに

OBOGインタビュー 山本明弥香さん

RQボランティア山本明弥香さん

 

自身の震災体験から、文化的支援に取り組む

 

自身が立ち上げたプロジェクトチーム「RING」のメンバーとともに、RQの活動に参加している現役芸大生の山本明弥香さん。
――被災地の子どもたちに、自分たちが暮らす町を撮影してもらい、その写真を被災地以外の場所で展示する――文化的支援としてのRINGの試みは、阪神・淡路大震災で被災し、ボランティアの支援を受けた山本さんが、被災地の子どもたちだけでなく、震災による甚大な被害にショックを受けた人を勇気づけようとの思いから始めた活動だという。

RQでは、7月初旬に河北で2日間、9月中旬に登米や歌津で活動させてもらいました。同じ学校の卒業生のご家族がRQの立ち上げメンバーだと聞いて、それなら私たちの活動も理解してもらえるのでは、と思ったのが、参加したきっかけです。たまたま登米の総務の方が、去年まで先端芸術表現科の助手をされていた方だったこともあって、子どもたちを集めて写真のワークショップを開けないか、相談しました。
被災地の子どもたちの写真を被災地以外で見てもらおうと思ったのは、震災の映像を見てショックを受け、閉じこもってしまった人を身近に見ていたからです。たしかに被災地の人たちは傷ついているけれど、厳しい生活のなかには前向きな行動や笑顔もあります。私自身、神戸で被災したとき、つらいなかにも楽しいことはあったし、ボランティアの人たちとの間に絆も生まれました。
被災地の子どもたちの笑顔や彼らが撮った現地の写真は、外の人たちを勇気づけます。それに子どもたちも、被災者ということで一方的に支援してもらうだけでなく、自分たちの行為が人を喜ばせるとわかれば、やはり嬉しいと思うんです。

 

つらいこともプラスに転じる、子どもたちの力

子どもたちの写真はその場でプリントして並べ、写真を撮った場所がどんなところなのか、子どもたち同士で話し合ってもらいます、と山本さん。写真を撮ることは、被写体をよく見ること。見ることは、周囲の環境を知ること。そして自分の町を知ることは、自分の町を好きになること、誇りを持つことにつながる。その気持ちは、ゆくゆくは被災した町を自分たちの手でよくしていこうという原動力になるのでは、と、山本さんは考えている。

 

最初は町を撮影している子どもたちを私たちが撮影して、その笑顔を見せ(展示し)ようと思っていたんですけど、子どもたちの撮った写真がすごくよくて。本当にきらきらしているというか、写真から楽しさが伝わってくるんですよ。彼らのいちばんの楽しみは外で走りまわることですけど、自分に1台のカメラが任されることは、やはり嬉しいことなんですね。壊れたトイレとか、大人が想像しないようなものを撮った写真を見ると、子どもはどんなことでも遊びに変える天才だなと思うし、つらいことや大変なこともプラスに転じる力を持っている。これを公開しない手はないなと思ったんです。
私たちがやろうとしているのは文化的な支援なので、必ずしも正しいことかどうかはわかりません。でも、私自身は被災後、少し落ち着いてくると、与えられてばかりいることにちょっとみじめな気持ちを感じたんです。最初、外から人が入ってくるときは、ちょっと抵抗もありますけど、被災者だけで固まっていると、考えが一方向になりがちなので、やはり外からの刺激は必要だなと。考え方は人それぞれでしょうけれど、何もしないよりは、何か自分ができることを通じて被災地に関わりたいとは思いますね。

 

 

 

適材適所で自分の力を発揮できるRQ

山本さんが阪神・淡路大震災で被災をしたのは、小学校1年生のとき。「朝、起きたら、空が見えていました」と話すように、家は半壊状態。しかもそのとき、母親は臨月を迎えていたという。臨月の母親にとって、人の多い避難所暮らしはストレスになるだろうと、一家は半壊の家にブルーシートをかけて雨風をしのぎ、生活したそうだ。

 

9月に現地に行ったときは、2日間はRINGの活動を、あと3日間は登米と歌津で活動しました。被災地では、皆さん仮設住宅に移っていて、活動も地域支援が主になっています。小泉では担ぎ手が少なくて、できるかどうかわからなかったお祭りを行うために、神輿の担ぎ手として、まだガレキだらけの町を練り歩きました。
歌津では、子どもキャンプの手伝いということで、キャンプ場の整備をして、地図や遊び道具をつくりましたけど、こういう作業は普段やっていることとほとんど変わらないので、気分としては、遊んで帰ってきたようなものですね(笑)。あとは、私たちがパソコンで映像編集ができることを途中で知られて、総務の人に仕事を依頼されたり・・。なんかいつもと同じことしているなあ、と思いましたけど、そうやって、適材適所で自分の力を発揮できるのが、RQの特徴だと思います。他ではなかなかお目にかかれないような個性的な人たちが、それぞれ自分の能力を生かすことができるのも、団体としてシステムが上手く機能しているということでしょう。
生活環境は想像以上によくて、これも多分、ボランティアの人たちが、自主的に工夫を重ねていることで過ごしやすい環境ができているのだと思いました。居心地がいいから居ついちゃうとか、リピーターが多いというのもよくわかりますね。

 

神戸での被災体験から、被災地の子どもたちが求めている“ものではない何か”に応えようと、プロジェクトを立ち上げた山本さん。だが、そんな行動力溢れる山本さんでさえ、震災直後はショックが大きかったようで、2週間くらい塞ぎこんでしまい、胃腸炎になりました、と、今年の春を振り返る。
それでも震災直後から現地に入った芸大生による現地報告を通じて、つらいなかでも笑顔を見せる被災者の姿に触れたことで、自身の体験を思い出した山本さんは、「落ち込んでいるよりも、できることで被災地に関わろうという気持ちになりました」という。RINGの活動を通じて懇意になった気仙沼のボランティア団体の依頼を受けて、キーホルダーの試作品をつくるなど、美大生らしい支援を行うRINGによる、被災地の子どもたちとの写真展は、11月に開催される神戸ビエンナーレでお披露目されるそうだ。

 

>>えがおつなぎproject HP

 

取材・文:つかきょん

 

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