(6)災害救援ボランティアセンターの心得1

1.現場から学ぶ

 阪神淡路大震災以降、各地で実施された「災害ボランティアコーディネーター」養成事業は、現場学習よりマニュアル学習が優先し、その結果、肝心の現場では適切な動きがとれず、かえって流れを阻害するケースをたびたび目にしました。言うまでもないことですが、大事なことは“現場から学ぶ”ということです。臨機応変、適材適所、柔軟さ、受容、ニーズの受信力、自己判断力。これらは現場で養われ、鍛えられます。しかし、災害教育の現場は被災地ですから、救援活動のさなかにこうした人材育成を行う目的意識がなければ「現場で学ぶ」しくみは成り立ちません。このことからも、「災害ボランティアコーディネーター」の育成には相当の強靭な意思と体制が必要だということがわかります。

2.情報を共有する

多様な人の集まりであるボランティアセンターでは、コアメンバーだけが情報を独占し指示を出すだけでは運営できません。集権と分権のバランス、信頼感の醸成が運営の要であり、これを確保するには情報の全員共有が不可欠です。私たちが中越大震災で運営した川口町ボランティアセンターは、早朝、活動出発前、活動終了時、就寝前の4回、その場に居合わせた全員が参加してミーティングを行いました。これによって、町や被災の様子、活動の最新の情報や方針が共有され、各リーダーが自立的な活動を担うことができました。

3.チームが自立する

 ボランティアセンターには、総務、物資、活動、受付、食担など、さまざまなチームが生まれ、それぞれに機能します。川口町では、さらにそのチームのなかに、子どもたちのケアを行う「子どものびのび隊」、お年寄りのケアを中心にした「ぬくもり隊」、寸断された道路網を縫って情報収集を行う「バイク隊」、ボランティアセンターの機能アップを支える「職人集団」など、多くのサブチームが生まれました。それらが、どのような指揮系統下で動くのか。被災地のカオスのような状況下で活動するボランティアセンターでは、個々のチームが独自の判断で動く状況を保障することが重要です。いちいち稟議が必要な体制など、災害ボランティア組織には不要です。その代わりに、日々の全体ミーティングが極めて重要になります。そこでチューニングすることで、各チームが自立して行動できるのです。

4.ルールは作らない

 どのような集団でも社会性があり、そのためには集団内のルールが必要です。しかし、ルールを作ると、ルールを守ることが目的化し、「ルールを守るためのルール」といった際限のない状況を伴うことも知られています。
 災害時のボランティアセンターでは、各自が自己判断・自己責任で行動することが大前提なので、集団内のルールは最小限にします。もちろん、現代社会人が即、災害時に自己責任で行動できるわけではありません。そこで、ボランティアが災害ボランティアセンターの姿を見て学ぶことが重要になります。ボランティアセンターが細かなルールによって運営されていれば、それを見たボランティアは「会社や学校の延長だ」と感じて指示待ちの状態が生まれ、センターの機能は各所で渋滞が発生するでしょう。しかし、細かなルールがなく、各人の自主的な判断がその隙間を埋めていると気づけば、それに倣ってしなやかでスムーズな活動が随所で展開されていくことになります。
「ルールは要らない」という意思を共有することが、災害時の効果的な動きを作り出すのです。

5.被災者、行政、他団体と協力する

 被災地では、段階によって、住民組織や自治体、被災者避難所の自治会、各ボランティア団体など、多様な機関・団体と向き合って活動します。そこでは自団体の論理を振り回すことは迷惑なだけです。また、時にはボランティア団体を「厄介もの」扱いする住民や自治体機関も見られます。つまり、よそ者集団は世話が必要だと思い込み、「こんな事態のときに負担になる」と考えるのです。また、被災地が防犯上きわめて無防備になるため、「よそ者は入れない」という思いもあります。そうした思いの錯綜するなかで、効果的ですみやかな活動を作り上げるために、災害ボランティアのコーディネーターは、辛抱強く粘り強く、わかりやすい言葉で活動の目的と範囲を明確に伝えていくことが求められます。さらに、コーディネーター自身の人間性も認めてもらえるよう、努力が必要です。制度が崩壊した災害時には、人間関係の基礎である互いの信頼感の醸成が最も大事になってきます。
(「ボランティアコーディネート」2005年1月10日)

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「災害救援と野外教育」から「自然学校と復興支援」へ  広瀬敏通

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