「聞き書き」は実際にはどのように行われているか、すでにはじまっている活動の様子をスライドで見せていただきながら、講義が行われました。
細かい文書作成の作法などはここでは割愛しますが、大まかにこのように聞き書きが行われるという概要をレポートします。

 

聞き書きの目的とは何か

 

まず、聞き手である私たちは、聞き書きの目的をしっかりととらえ、聞くことに伴う責任や役割についても共有しておかなければなりません。

(1) 人々の小さな歴史(ライフヒストリー)を掘り起こし、寄せ集め、そこから地域を再生・継承するための手掛かりを得ること。
(2) 語り手が、自分が生きて来た道を振り返り見直すことで、今ここを生きる価値を再認識してもらう。
(3) 聞き取りに参加した人々が「伝え手」として発信する。

 



(注※この(3)に関しては、RQとしては聞き書き自体が始まったばかりであり、どのように発信するのかなど、詳細はこれからといった段階です。現在は個人史をお話しくださったかたに、聞き書きをまとめたものをお渡しするだけにとどめています。プライバシーの問題もあり、お話しされたご本人以外のかたにはお見せすることはしておりません)

 

語り手をどうやって探しているのか

 

それでは、語り手となってくださる方をどのように見つけてお願いしているのでしょうか。
適当な家に「飛び込み営業」のようにいきなり入ってお願いしているわけではありません。
その土地で暮らしたことのない方が聞き書きメンバーとなることがほとんどだと思いますが、「よそ者」にはわからない地域産業独特の雇用関係や、その衰勢の歴史などがあって、人間関係が形作られています。
ですので、その地域の信頼できる紹介者に間に立っていただき、話し手も「この人が薦めてくれるんだったら」と安心して話していただけるような環境を整えることがキーポイントになってくるようです。

 

聞き書きの実際

 

(1) チームで動く

聞き書きは、一人の力ではできません。5名程度のチームで動きます (インタビュアー1名、記録者2名以上、写真・ICレコーダ操作1名以上) 。
聞き手だけが話し手に質問をするのでなく、話が横道にそれ始めたとき、聞き手自身が感情移入をしているとき、他のメンバーが「あいの手」をうまく入れることで、客観性を持った、質の良いインタビューになります。
聞き手役以外のメンバーの役割は「同調しない」ことで、常に冷静にインタビューの流れを見極めなければなりません。
聞き手自身も一定の主観・人生観を持っていますので、客観的な立場を貫くためにあまりに感情移入したり、自分が思ってる方向へと誘導するような質問はさける必要があります。また他のメンバーがそれを察知して「合いの手」を入れるアシストも必要となってくると思います。
(この日参加のエコセン世話役の山中さん(取材のプロ)がこの「冷静な記録者のアシスト」に関するアドバイスをしてくださいました)

 

(2) 主旨を話し手に理解していただく:
聞き書きをする前日には、「聞き書きのおねがい」を話し手に配布し、主旨について予めご説明をしておきます。
伺った当日にも、お話しを伺う前に再度、聞き書きの主旨について再度ご説明をし、お互いの認識にずれがないことを確認します。

 

(3) 自己紹介をしっかりと
自分から相手に心を開くことで相手も心を開いて下さいます。
最初からいきなり「では生まれたところから」と唐突に始めるのでなく、
まず自分が何者なのかしっかり話し、世間話を通してお互いの共通の話題を見つけるなどして緊張をほぐすことが大切。

 

(4) 効果的な質問が命

聞き書きした内容はあとで時系列に並べ、個人史としてまとめていくのですが、
実際の聞き書きでは、時系列通り順序よく話が語られるわけではありません。
ですので、「それは何歳ぐらいの時ですか?昭和で言うと何年?」などの「年代順に並べ直すための質問」が必要になることがあります。
同じ津波でも、下記の図のように、年齢によって体験している、あるいは強烈に印象に残っている津波も違います。

また、話し手にとって強烈な印象の残ることを集中的に長い時間語られることがあり、そこから発展して個人史とは離れた話題になってしまうことがあります。
一生懸命話されていると、遮るのがためらわれると思いますが、そこはいったん大きく受け止めて、相手の話をよく聞いていることを表現しつつ、タイミング良く、先ほどまでの話の続きはどうなったかを聞くなど、個人史に戻っていただくような「話を戻す勇気」が必要です。

また、同じ事象について話されるのでも、そこにその方がどういう立場でどのように関わっていたのかによって、思い出もずいぶんと変わってきます。話し手の語る個人史の中では、事実がすでに個人の主観・人生観のフィルタを通っているために、同じことを語っているのに、人によりまったく異なったもののように聞こえることもあるかもしれません。
たとえば、漁業関係者と言っても、昔の網元制度のもとでの雇用関係や、漁業の種類(遠洋漁業か近海の漁民かなど)によって、
漁業に対する考え方、感じ方も異なってくるので、それについても知っておいたほうがよいでしょう。

 

大きな問題として、方言が聞き取れず苦労するということも少なくないようですが、ICレコーダーに録音しても後できいてもわからないものですので、その場で「自分はこのように理解しましたが、それでよいでしょうか?」と確認することも大切な質問の一つです。

以上のことから、メモや機材もバックアップとしてありますが、その場で集中してきちんと聞きとる努力、質問力が重要なカギになってくることがわかります。

 


(5) 聞き取りはその日のうちにまとめる
おひとりの話し手に午前中に1時間30分の聞き取りを実施したら(お昼には切り上げる)、
戻ってチームでその日のうちに個人史としてまとめ、データをPCに保存し、仕事は一切残さないようにします。
必ず仕上げてから解散です。報告書の作成には3時間ほどかかるので、全員参加、協力して作成していきます。
定型のワークシート、
ご本人の承諾を得てなるべく正面から撮影したポートレート、
ご本人の承諾を得て録音したICレコーダの音声データ。
同じ定型の整理番号をつけて、データがばらけないようにする。
データは形式の決まった整理番号を付け、決められたフォルダに保存します。

 

盛りあがったワークショップ
最後に、4~5人の小グループに分かれての聞き書きのワークショップが行われました。
いま講義を聞いたばかりの作業をするのに、みんな最初は顔をみあわせておっかなびっくりな感じで始まりました。
そのグループでおひとり話し手になっていただき、一人は聞き手に、ほかのメンバーが記録係となって聞き書きを体験することになりました。

私は記録係をしていたのですが、あまりに記録に必死になっていたため質問がとっさに浮かばず、質問を考えると手が止まってしまうといった感じで、「冷静な第三者」という立場は崩壊していたように思います。
聞き手となっていた方は冷静に質問をして、話し手の暴走(?)を止める役割を果たしていたので、時間内に生まれてから現在までを話していただくことに成功していました。
このように他の方がよいお手本を見せてくださると、とても参考になります。

 

聞き書きしたあとは、個人史をまとめる作業です。
模造紙を年表にして、全メンバーで手分けしてどの時期にこんなトピックがあった、というのを
付箋紙に書いてどんどん貼り付けて行きます。

 

それがおわると、各班ごとに聞きとった個人史の発表です。これがとても盛り上がりました!
おしゃれだったお母様やとても楽しい思い出のたくさんあった幼少期のことが楽しい個人史、自分と今の仕事の関わりを軸にしているとても重みのあるものや、
 
ひょうひょうとした中にも温かい人間性が感じられてほほえましいものや、さまざまな物語がありました。
そして個人史をきくことが、こんなに味わい深いものだとは思いませんでした。

 

発表後、活発な質疑応答が展開されました。質疑応答での内容は、上記の講義内容に含めてありますので、ここでは詳細は省略しますが、真剣なやりとりが時間をオーバーして行われ、参加された皆さんの熱意が伝わる時間でした。

 

最後に高田さんのおっしゃった、「ひとつひとつの聞き書きがすぐに何かになるわけではないが、積み重ねることで成果がでるものだ」という、長年の経験を経てのお言葉が本当に心に沁み、背中を押された気持ちになりました。

 

まずやってみよう、と思う方。
情報によると、高田さんは8月15日から登米に数日いらっしゃって、聞き書きの活動をされるようです。
皆様も、ぜひ活動にご参加ください!
<<「聞き書き」研修会:参加レポート(1)へもどる

 

(東京本部 WEBチーム Dylan Sanders)

このエントリーをはてなブックマークに追加
Post to Google Buzz